鈴木ラボでの研究
当研究室は、基礎科学と応用科学の両面から最新の研究技術を開発し、健康的な生活の実現に寄与することを目指しています。当研究室では細胞培養、動物モデル、ヒト試験などの手法を用いて、「健康に生きる」ための食開発研究を実施しています。
Our laboratory develops and performs the latest innovative research techniques in both basic and applied sciences to optimize human health and performance in all walks of life. Our laboratory research uses a diverse set of professional research modalities including cell culture, animal models and human studies to offer the most impactful information in the field of food development for health and performance.
現在の研究内容
食と血糖値変化の研究
■骨格筋細胞への糖の取り込みを促進
骨格筋の研究が何の役に立つのか・・・典型的なイメージとしては、アスリートのパフォーマンス向上や高齢者の生活の質を維持するための筋力維持などです。
骨格筋への糖の取り込みは体を動かすために必要なエネルギーを作る重要なステップです。また、食後に上昇する血糖値が速やかに基底状態に戻るまでの過程でも大きな影響があります。このように食事が血となり肉となる過程で重要な骨格筋における栄養代謝に着目した研究を実施しています。
■グリセミックインデックス(GI値)の測定
食後の血糖値変動は糖尿病の人だけが気にしなければならないものではなくなってきました。健常者でも血糖値の高い状態が長く続くような生活習慣や、血糖値が急激に上昇するような食事習慣は体の中での酸化ストレスや糖化ストレスを蓄積し、肌トラブルや生活習慣病の原因となります。どのような食事のとり方がグリセミックインデックス(GI値)を低く抑えるために有効なのかを研究し、世の中の多くの人々に有用な情報を発信していきます。
食素材の皮膚への作用に関する研究
■肌測定装置を用いた食の美容効果に関する研究
皮膚水分量、経皮水分蒸散量、皮膚粘弾性、皮脂量を測定する装置を用いて研究をしています。肌の状態は季節変動などの環境因子、睡眠不足などの体調に関する因子の影響を大きく受けますが、食も肌の状態に意外と大きな影響を及ぼします。多くの要因の影響を捉えながら多角的な視点で解析をしています。
■エクソソーム様小胞による皮膚保護作用の研究
植物由来の成分の不思議な機能性を説明する鍵がエクソソーム様小胞にあるのではないかと考えて、研究テーマに取り上げています。次々と面白い成果が出てくることに期待してください。
新しい食品素材の開発研究
■食品成分の吸収・代謝
食品新素材の開発にはまず、吸収・代謝に関する基本的な知見が求められます。
食品成分は腸管から吸収されるとまずは門脈を通じて肝臓に運ばれます。肝臓に到達した食品由来の成分は様々な代謝を受けて、吸収されたときとは異なる構造に変化します。生体における食品成分の吸収性を把握するには門脈血を経時的に収集することが必要不可欠ですが、非常に難易度の高い技術を要します。
当研究室では、本学の松浦教授が開発された「ラット門脈カテーテル留置法」を伝授していただき、様々な食品素材の吸収に関する研究を生体レベルで実施しています。
■美容食品・アスリート用食品などの開発研究
顧客志向の食開発には、顧客の潜在ニーズを発掘するステージからのアイデア発想が重要です。20代女性をターゲットにしたマーケティング調査や、マーケティング結果に基づいた処方開発、品質設計、検証までの開発研究を実施します。気軽にご相談ください
■新素材の機能性評価とメニュー開発
食品ロス削減は食分野の深刻な課題として認知されるようになってきました。農作物の廃棄部位や加工過程での残渣などを新しい素材の卵と捉えて、様々な企業様と連携しながら、その利用方法を開発します。機能性とメニュー開発の両面からアプローチします。
過去の研究内容
皮膚への浸透及び作用に関連する研究
■ラクトフェリンの肌への作用に関する研究
野上明日香、竜瑞之、原田直樹、鈴木靖志、山地亮一 (2019) ヒト皮膚線維芽細胞の増殖と細胞外マトリックス発現におけるアポ型とホロ型ラクトフェリンの作用評価、ラクトフェリン2019、47-52
吉田智、鈴木靖志、寺本寛明、板橋武史、笹津備尚、輪千浩史(2019)ラクトフェリンによる表皮角化細胞の増殖および遊走促進効果、Milk Sci. 68, 24-29
吉田智、鈴木靖志、輪千浩史 (2019) ラクトフェリンの経口投与による褥瘡様皮膚潰瘍の予防効果、臨床栄養、134、977-980
Ryu M., Nogami A., Kitakaze T., Harada N., Suzuki Y. A., Yamaji R. (2017) Lactoferrin induces tropoelastin expression by activating the lipoprotein receptor-related protein 1-mediated phosphatidylinositol 3-kinase/Akt pathway in human dermal fibroblasts. Cell Biol. Int. 41, 1325-1334
Jiang R., Suzuki Y. A., Du X., Lonnerdal B.* (2017) Lactoferrin and the lactoferrin-sophorolipids-assembly can be internalized by dermal fibroblasts and regulate gene expression. Biochem. Cell. Biol. 95, 110-118
Matsumiya K., Suzuki Y. A., Hirata Y., Nambu Y., Matsumura Y.* (2017) Protein-surfactant interactions between bovine lactoferrin and sophorolipids under neutral and acidic conditions. Biochem. Cell. Biol. 95, 126-132
Ishii N., Ryu M., Suzuki Y. A.* (2017) Lactoferrin inhibits melanogenesis by down-regulating MITF in melanoma cells and normal melanocytes. Biochem. Cell Biol. 95, 119-125
鈴木靖志、竜瑞之(2017) 皮膚損傷に対するラクトフェリンの効果、ラクトフェリン2017、7-10
石井七瀬、薮ノ内真子、竜瑞之、鈴木靖志 (2015) ラクトフェリンによるメラニン生成の抑制、ラクトフェリン2015、47-52
鈴木靖志、石井七瀬、竜瑞之 (2015) 皮膚外用剤としてのラクトフェリンの利用、ラクトフェリン2015、19-24
石井七瀬、竜瑞之、平田善彦、鈴木靖志 (2013) 皮膚へのラクトフェリンの作用に及ぼすソホロリピッドの影響、ラクトフェリン2013、7-11
竜瑞之、石井七瀬、平田善彦、鈴木靖志 (2013) ラクトフェリンを配合した化粧品の使用による皮膚の評価、ラクトフェリン2013、55-59
Ishii N., Kobayashi T., Matsumiya K., Ryu M., Hirata Y., Matsumura Y., Suzuki Y. A*. (2012) Transdermal administration of lactoferrin with sophorolipid. Biochem. Cell. Biol 90, 504-512
井上奈々子、竜瑞之、吉田智、鈴木靖志 (2011) 腸溶性ラクトフェリンサプリメントの皮膚状態へ及ぼす作用、ラクトフェリン2011, 132-137
吉田智、清水、水野、鈴木靖志、輪千浩史、瀬山義幸 (2011) 坐骨神経切除モデルマウスにおける腸溶性ラクトフェリンの褥瘡発症予防効果、ラクトフェリン2011, 138-141
腸管における吸収性及び機能に関連する研究
■食品ペプチドの吸収・代謝、及び分析手法に関する研究
Yusuke Kawano, Maeka Shiroyama, Kohji Kanazawa, Yasushi A. Suzuki, and Iwao Ohtsu (2019) Development of high throughput quantitative analytic method for L cysteine containing dipeptides by 2 LC MS/MS, Appl. Microbiol.
Ejima A., Nakamura M., Suzuki Y. A, Sato K. (2018) Identification of food-derived peptides in human blood after ingestion of corn and wheat gluten hydrolysates. J. Food Bioact. 2, 104-111
■ヒト小腸上皮のラクトフェリン受容体に関する研究
Suzuki Y. A., Wong H., Ashida K., Schryvers A. B., Lönnerdal B*. (2008) The N1 domain of human lactoferrin is required for internalization by Caco-2 cells and targeting to the nucleus. Biochemistry 47, 10915-10920.
Suzuki Y. A., and Lönnerdal B. (2006) 小腸ラクトフェリン受容体を介したラクトフェリンの細胞内取り込み. FFI J. 211, 406-413.
Lopez V., Suzuki Y. A., and Lönnerdal B*. (2006) Ontogenic changes in lactoferrin receptor and DMT1 in mouse small intestine: implications for iron absorption during early life. Biochem. Cell Biol. 84, 337-344.
Suzuki Y. A., Lopez V., and Lönnerdal B. (2005) Mammalian lactoferrin receptors: structure and function. Cell Mol. Life Sci. 62, 2560-2575.
Ashida K., Sasaki H., Suzuki Y. A., and Lönnerdal B*. (2004) Cellular internalization of lactoferrin in intestinal epithelial cells. Biometals. 17, 311-315.
Suzuki Y. A., and Lönnerdal B*. (2004) Baculovirus expression of mouse lactoferrin receptor and tissue distribution in the mouse. Biometals. 17, 301-309.
Suzuki, Y. A. & Lönnerdal, B. (2002) Characterization of mammalian receptors for lactoferrin. Biochem. Cell Biol. 80, 75-80.
Suzuki, Y. A., Shin, K., & Lönnerdal, B*. (2001) Molecular cloning and functional expression of a human fetal intestinal lactoferrin receptor. Biochemistry 40, 15771-15779.
骨格筋への作用及び糖尿病に関連する研究
■羅漢果の機能性等の研究(抗糖尿病、抗酸化)
吉田智、鈴木靖志、寺本寛明、板橋武史、笹津備尚、輪千浩史 (2018) ラカンカ抽出物の経口投与による実験的糖尿病マウスの創傷治癒促進効果、応用薬理、95、121-126
Harada N., Ishihara M., Horiuchi H., Ito Y., Tabata H., Suzuki Y. A., Nakano Y., Yamaji R., Inui H.* (2016) Mogrol derived from Siraitia grosvenori suppresses 3T3-L1 adipocyte differentiation by reducing cAMP-response element-binding protein phosphorylation and increasing AMP-activated protein kinase phosphorylation. PLoS One 11, e0162252
村田雄司、鈴木靖志 (2008) 砂糖代替甘味料:羅漢果(ラカント). Functional Food 2, 32-38.
Suzuki Y. A.*, Tomoda M., Murata Y., Inui H., Sugiura M., and Nakano Y. (2007) Antidiabetic effect of long-term supplementation with Siraitia grosvenori on the spontaneously diabetic Goto-Kakizaki rat. Br. J. Nutr. 97, 770-775.
村田雄司、吉川慎一、鈴木靖志、杉浦正毅、乾博、中野長久* (2006) 羅漢果配糖体の甘味特性およびその改善、日本食品科学工学会誌53, 527- 533.
Suzuki Y. A.*, Murata Y., Inui H., Sugiura M., and Nakano Y. (2005) Triterpene glycosides of Siraitia grosvenori inhibit rat intestinal maltase and suppress the rise in blood glucose level after a single oral administration of maltose in rats. J. Agric. Food Chem. 53, 2941-2946.
栄養ケア・口腔ケアに関連する研究
■とろみ調整食品に関する研究
Suzuki A., Yoshida S., Nakamura M., Ohyado S., Suzuki Y. A.* (2015) Reliability of human senses for evaluating texture of food. J Integ Cre Stud 1, 1-9
中村愛美、吉田智、岩品有香、房晴美、大宿茂、鈴木靖志* (2012) 「とろみ」指標食材の物性解析:Line Spread Test法による「とろみ」の分類の適応と限界、日摂食嚥下リハ会誌 16, 155-164
中村愛美、吉田智、西郊靖子、林静子、鈴木靖志* (2012) 食材の物性に及ぼす影響から見た市販とろみ調整食品の分類、栄養学雑誌 70, 59-70
中村愛美、佐藤文華、吉田智、熊谷昌則、鈴木靖志* (2010) とろみ調整食品による食品のゾル化に伴う味質変化の評価:味覚センサの可能性について、日本食品科学工学会誌 57, 380-388.
中村愛美、吉田智、岩品有香、大宿茂、鈴木靖志* (2009) とろみ調整食品で調整した粘稠液状食品のLine Spread Test一部改変法(シリンジ法)による評価、日摂食嚥下リハ会誌 13, 197-206.
■口腔ケアに関する研究
田端宏充、川田賢介、小川貴央、坂本光央、吉田智、鈴木靖志、植田耕一郎、辨野義巳、石川好美* (2014) 保湿スプレー療法による口腔乾燥患者の口腔湿潤度及び舌背部細菌叢への影響、日摂食嚥下リハ会誌 18, 44-52
川田賢介、岡本喜之、田端宏充、吉田智、鈴木靖志、石川好美* (2013) 口腔乾燥症に対する保湿スプレーの使用感調査、歯科薬物療法学会誌 32, 10-15
その他
■2023年度卒論
・トルコ食材「ブルグル」の加熱条件とグリセミックインデックス 廣田安美
・海苔タンパク質の利用効率改善方法の開発 勘米良真希
・食品由来エクソソーム様小胞の調製条件と抗糖化作用の関係 松浦ほの香
・海苔由来成分による骨格筋の糖取り込み促進作用 古谷芽依・松本真璃華
■2022年度卒論
・グルコースで糖化したラクトフェリンの特性解析 中野桃子
・各種食品成分による血清アルブミン糖化抑制、コラーゲン糖化抑制効果 宮下文寧
・食事・月経周期・環境因子・および食品由来成分塗布が皮膚状態に及ぼす影響 嶋田捺美
・食品抽出物がC2C12骨格筋細胞へのグルコース取り込みに及ぼす影響 木嶋唯佳・三木律奈
・コーン由来ペプチドをラット胃内へ投与したときの門脈血中ペプチドの解析 中城美紀
■2021年度卒論
・食品由来エクソソーム様小胞の特性評価 泉雛子・山口優里花
・肌測定に影響を与える要因に関する解析 國賀聖菜
・グリセミックイデックスに関する研究 栫茉莉子・吉井凛加
■2020年度卒論
・様々な食材からのエクソソーム様小胞の抽出と特性評価 大嶋涼・木津百花
・オリゴ糖シロップのグリセミックインデックスと甘味特性 北脇まみ・廣濱沙也加